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学会賞
日本選挙学会賞は、会員相互の研究交流の促進と広い意味の選挙研究の発展を目的として2009年度創設されました。 学会賞には、研究会のポスターセッションにおける会員の優れた研究発表を対象とする「優秀ポスター」、研究会における会員の優れた論文報告を対象とする「優秀報告」、『選挙研究』に掲載された会員の優れた投稿論文を対象とする「優秀論文」、の3つの賞が設けられています。
2023年度 日本選挙学会賞
2023年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 鎌原勇太(横浜国立大学) 和田淳一郎(横浜市立大学) |
「定数配分と基準人口―2016年「衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律」の成立までの過程を事例として―」 |
千馬あさひ(大阪大学) 松林哲也(大阪大学) |
「選挙の頻度と投票率」 | |
優秀報告 | 寺下 和宏(日本学術振興会) | 「女性団体・運動は女性の実質的代表に影響を与えるのか:韓国の議会議事録を用いた実証分析」 |
優秀ポスター | 吐合 大祐((公財)後藤安田記念東京都市研究所) 井関 竜也・石間 英雄(京都大学) 西村 翼(立命館大学) |
「党内社会の人間関係―政治資金を通じたネットワーク形成ー」 |
三輪 洋文(学習院大学) 小椋 郁馬(茨城大学) |
「Politicians' Gender and the Persuasiveness of Their Policy Statements: Two Survey Experiments in the U.S. and Japan」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2023年度学会賞講評
2023年度の学会賞は、優秀論文賞2件、優秀報告賞1件、優秀ポスター賞2件が選出されました。
優秀論文については『選挙研究』第39巻1号、2号に査読を経て掲載された論文9本が選考の対象となりました。5人の選考委員によるオンライン会議を行い、まず各選考委員の1位と2位を挙げてもらいました。さらにその後、審議を行い、鎌原勇太・和田淳一郎「定数配分と基準人口―2016年『衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律』の成立までの過程を事例として―」『選挙研究』第39巻1号、千馬あさひ・松林哲也「選挙の頻度と投票率」『選挙研究』第39巻2号、が選出されました。
鎌原・和田論文では、2016年に、定数配分においてベースとなる基準人口が総人口から日本国民の人口に変更されたことに着目し、参政権における国籍原理と外国籍国内居住者も含む被影響原理、被服従原理の観点から、基準人口においても同様の規範的立場が存在することを示唆しています。一般に見落とされがちであった制度変更について焦点を当てた意義深い研究であると評価されました。
千馬・松林論文では、2013年参院選から2016年参院選の期間について、自治体別の投票率について地方選挙の頻度が参院選の投票率に影響を及ぼしたか否かについて検討を加え、直近の地方選挙からの日数が少ないほどその後の参院選投票率が低下する傾向があることを見出しました。適切な分析手法を用いた精緻な研究である点が評価されました。
優秀報告については、2023年度研究会で発表された報告のうち、33点が選考対象となりました。慎重審議の結果、寺下和宏「女性団体・運動は女性の実質的代表に影響を与えるのか:韓国の議会議事録を用いた実証分析」(分科会K・団体・社会運動部会)が選出されました。同報告は社会運動研究と代表制、議員研究を接続する点に斬新性が認められました。社会運動と政策帰結の間を媒介するメカニズムに焦点をあて、抗議イベントの議員行動(議会発言)への影響を探るもので、実質的代表の実現における市民社会・社会運動の役割を再考しています。テーマの将来性も大きく、分析対象となった韓国だけでなく、日本をはじめ比較政治上の応用可能性もあるという点も評価されました。
優秀ポスター賞については、ポスター報告のうち13点が選考対象となりました。その中から、吐合大祐・井関竜也・石間英雄・西村翼「党内社会の人間関係―政治資金を通じたネットワーク形成-」および三輪洋文・小椋郁馬「Politicians' Gender and the Persuasiveness of Their Policy Statements: Two Survey Experiments in the U.S. and Japan」が選出されました。
吐合・井関・石間・西村報告は、国会議員の政治資金収支報告書をもとに、議員間のパーティ券購入等の関係性をネットワーク分析により可視化することを試みた研究です。政治資金収支報告書は貴重な資料でありながらも、必ずしも議員間の関係性を描くデータとして有効に活用されてこなかったため、報告者らの試みは極めて有意義であると評価されました。
三輪・小椋報告では、候補者の性別によって有権者の評価は異なるのか、といったリサーチクエスチョンに対して、性別、政党支持、言及する争点の種類、イデオロギーなどを十分にコントロールしたうえで、実験的手法を用いて日米比較を試みた労作です。当日のポスターでは図表や写真を多用し、視覚的に大変わかりやすいだけでなく、複雑な研究計画と分析結果をコンパクトかつ見やすく整理されていた点も評価されました。
学会賞が今後も会員の研究活動の励みとなり、多様で優れた研究を生み出すことにつながることを祈念いたしますとともに、今回の選考にご協力いただいた方々に改めて御礼申し上げます。
2023年度学会賞選考委員長 井田 正道
2022年度 日本選挙学会賞
2022年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 手塚雄太(國學院大學) | 「戦前日本における個人後援会の全国分布-内務省警保局資料を中心に-」 |
優秀報告 | 淺野良成(慶應義塾大学) | 「国会議員の政策位置と委員会活動」 |
益田高成(新潟大学) | 「公職選挙法改正をめぐる立法過程」 | |
優秀ポスター | 細貝亮(早稲田大学) | 「日本における感情的分極化―その変化と規定要因―」 |
西耕平(神戸大学・日本学術振興会) | 「政府の政策パフォーマンス悪化とソーシャルメディアにおける政府への暴言」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2022年度学会賞講評
2022年度の学会賞は、優秀論文賞1名、優秀報告賞2名、優秀ポスター賞2名の計5名に授与することにいたしました。
優秀論文は、『選挙研究』38巻1号に査読を経て掲載された4本の論文から選考いたしました(38巻2号には審査対象論文の掲載はありませんでした)。いずれも高い水準の論文ではございましたが、選考委員会での審議の結果、手塚雄太会員の「戦前日本における個人後援会の全国分布-内務省警保局資料を中心に-」を選ぶことにいたしました。手塚論文は、1927年の男子普通選挙以降の後援会組織の全国的な分布を量的に示し、その増加の原因を探ったもので、内務省の資料を使用した点や今後の研究への大いなるインパクトが期待できる点で高く評価できるものと考えます。
優秀報告と優秀ポスターは、5月7・8日に金沢で開催された総会・研究会での分科会で発表されたものから選考いたしました。優秀報告には、発表された合計37の報告のうち受賞資格のある報告を対象に審査し、淺野良成会員の「国会議員の政策位置と委員会活動」(分科会C・政党・議会I)と、益田高成会員の「公職選挙法改正をめぐる立法過程」(分科会G・制度・法律)の2点を選ぶことにいたしました。淺野報告は、日本の国会議員の政策選好と委員会所属や発言との関係を検討したもので、多様なデータを駆使して分析した意欲作と評価されました。益田報告は、1950年の公職選挙法制定以降の立法過程の特徴を計量的な手法で分析し、公選法改正に関する様々な特徴を明らかにした労作であります。
優秀ポスター賞は、計18のポスター報告から、細貝亮会員の「日本における感情的分極化―その変化と規定要因―」と、西耕平会員の「政府の政策パフォーマンス悪化とソーシャルメディアにおける政府への暴言」を選びました。細貝ポスター報告は、2012年の第二次安倍政権誕生以降、日本でも党派性のある有権者の間では党派的分極化が進んでいる旨が感情的分極化という尺度を用いて分析されています。西ポスター報告では、政府の政策パフォーマンス悪化がSNSにおける政府や政治家への暴言をどの程度増やすかという分析を、コロナ感染拡大以降のアメリカを対象に行ったものです。いずれも意欲的な研究で、分科会では多くの会員の方々が注目されたものと拝察いたします。
本年度は、久しぶりの対面での学会開催となったこともあり、各分科会とも盛況で、学会賞選考の審査に携わって下さった方々からの評価も全般的に高く、選考は難しいものでありました。お忙しい中、選考に携わって下さった皆様に、改めて御礼申し上げます。『選挙研究』38巻第2号に対象論文が掲載されなかったことはいささか残念ではございますが、来年度以降も、選考委員を悩ますような優れた論文、報告、ポスターが多数発表されますことを切に願っております。
2022年度学会賞選考委員長 河﨑 健
2021年度 日本選挙学会賞
2021年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 金子智樹(学習院大学) | 「日本の新聞の左右論調:1970年〜2019年」 |
優秀報告 | 小椋郁馬(Georgetown University) | 「オンラインサーベイデータを用いた政治的洗練性の推定」 |
稲増一憲(関西学院大学) | 「マスメディアに「影響される」のは自分ではなく誰なのか」 | |
優秀ポスター | 藤村直史(神戸大学) 重村壮平(神戸大学) |
「どのような条件下で政治家は選挙操作・不正を是正しようとするのか?一票の格差に関する都道府県議会議員へのサーヴェイ実験」 |
清水直樹(高知県立大学) 矢内勇生(高知工科大学) 鷲田任邦(東洋大学) 東島雅昌(東北大学) |
「民主制と独裁制の垣根を越えた選挙タイミングの包括的分析:Election Timing across Autocracy and Democracy」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2021年度 学会賞講評
2021年度の学会賞は、優秀論文については『選挙研究』第37巻1号、2号に査読を経て掲載された論文5本が対象となりました。5人の選考委員で順位付き投票を行った後、オンライン会議により審議を行いました。その結果、全会一致で金子智樹氏の「日本の新聞の左右論調:1970年~2019年」を選ぶことといたしました。金子氏の論文は、全国紙と地方紙計50紙における1970年から2019年の50年間の憲法記念日前後の社説2211本を計量分析したものです。分析結果からは、地方紙において、共同通信の資料に依拠した社説は多数派とは言えないこと、日本の新聞の左右イデオロギー的論調が多様であり、決して「無色・中立」ではないことを示しています。労力をかけたデータ収集と精緻な分析、戦後日本の新聞読者の政治意識の分析につながる可能性が高く評価されました。
優秀報告については、2021年度研究会で発表された報告のうち、筆頭著者が会員であるもの26点が選考対象となりました。その中から小椋報告と稲増報告が選ばれました。小椋報告はウエブ調査における不正行為に対して独自の統計モデリングにより補正を試みた点が評価されました。稲増報告は第三者効果を「回答者と他者のイデオロギーの異同」を踏まえて分析するという発想の独創性が高く評価されました。
優秀ポスター賞については、18点が選考対象となりました。その中から、藤村・重村報告および清水・矢内・鷲田・東島報告が選ばれました。藤村・重村報告は一票の格差という問題に対して、政治家へのサーベイ実験をおこなった点が高く評価されました。清水他の報告は、オリジナルのデータを構築して、選挙のタイミングと政治体制に対する先行研究を明確に覆そうとする発想の独創性が高く評価されました。
今回の審査にあたっては、学会が初のオンライン開催となったことで、審査に関わった皆様にこれまで以上にご負担をかけることになりました。学会賞が今後も会員の研究活動の励みとなり、多様で優れた研究を生み出すことにつながることを祈念いたしますとともに、今回の選考にご協力いただいた方々に改めて御礼申し上げます。
2021年度学会賞選考委員長 稲葉哲郎
2020年度 日本選挙学会賞
2020年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 勝又裕斗(東京大学) | 「中選挙区制における得票均衡の検証のための新指標」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2020年度 学会賞講評
2020年度の学会賞は、優秀論文については『選挙研究』第36巻1号、2号に掲載された投稿論文3本が対象となりました。5人の選好委員で順位付き投票を行った後、オンライン会議を開いて審議を行いましたが、その結果、全会一致で勝又裕斗氏の「中選挙区制における得票均衡の検証のための新指標」を選ぶことといたしました。勝又氏の論文は、従来いわゆるM+1法則を検証するために用いられてきた有効候補者数という測定指標が、理論に完全には適合するものではなく問題を孕むものであることを鋭く指摘したうえで、それに代わる新たな指標を提起し、これを用いて戦後の政党システム変化を描写しようとしたものであり、国内外の関連する研究にも今後大きな影響を及ぼす可能性を持つ論稿として高く評価されたものです。
なお優秀報告賞、優秀ポスター賞につきましては、学会での口頭発表が見送られたことを受け、残念ながら今年度は選考を見送ることとなりました。
学会賞が今後も会員の研究活動の励みとなり、多様で優れた研究を生み出すことにつながることを祈念いたしますとともに、今回の選考にご協力いただいた方々に改めて御礼申し上げます。
2020年度学会賞選考委員長 建林正彦
2019年度 日本選挙学会賞
2019年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | Nisar Ahmad Muslih(Nangarhar University)and Kyohei Yamada(立教大学) | "Obtaining Multiple Election Cards and Voting Multiple Times in Afghanistan : Data from a Survey of Voters in Jalalabad City" |
優秀報告 | 三輪洋文(学習院大学) | 「日本の最高裁裁判官のイデオロギー位置の推定」 |
久保 慶明(琉球大学)・岡田 勇(名古屋大学)・柳至(琉球大学) | 「サーベイ実験を用いた2019年沖縄県民投票の分析 ―選択肢デザイン効果と投票参加効果―」 | |
優秀ポスター | 岸下大樹(東京大学大学院)・山岸敦(東京大学大学院) | "Contagion of Populist Extremism" |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2019年度 学会賞講評
2019年度の学会賞は,下記のように決まりました。
まず優秀論文について選考結果を簡単にまとめておきます。選考の対象となったのは『選挙研究』35巻1号及び同2号に掲載された投稿論文3本です。5人の選考委員の順位付き投票を集計した結果,最も得点の高かったのが第1号に掲載されたMuslish & Yamada論文でした。アフガニスタンのジャラーラーバードという地で様々な困難がある中で投票者を対象に選挙の実態を明らかにすべくサーベイを行い,興味深い知見を得ているという点が高く評価されました。
次に優秀報告と優秀ポスターですが,2019年度研究会(於,東北大学)における32の口頭報告と18のポスター報告がそれぞれ選考の対象となりました。
優秀報告ですが,小委員会の第1次審査で選考に残った報告を対象に,選考委員会の各委員がそれぞれで個別に評価できると判断した2点までを推薦し,最も多くの推薦を得たものを優秀報告とするという形で選考を行いました。その結果,三輪報告と久保・岡田・柳報告の2点が選ばれました。三輪報告は膨大なデータと洗練された分析手法を用いて,日本の最高裁裁判官のイデオロギー位置を量的に測定するという課題にチャレンジし,最高裁における保守的傾向の存在という一定の結論が得られていることが評価されました。久保・岡田・柳報告は住民投票において単に「賛成」や「反対」という二者択一の選択肢だけではなく,「どちらでもない」という選択肢を入れることの投票に対する効果や,住民投票の実施が市民の「意思表明の機会を与えられるべき」という認識にどのような効果をもたらすのかということなどを,2019年の沖縄での県民投票に際して実施したインターネット調査で明らかにした非常にタイムリーな報告であることが評価されました。
優秀ポスターの選考も優秀報告と同様の手順で行いました。その結果,選出されたのは岸下・山岸報告となりました。ポピュリズムをはじめとした過激主義の国境を越えた伝播という問題に取り組み,精緻な数理モデルの構築とそれに基づく実証研究が高く評価された結果に他なりません。
各賞は簡単に決まった訳ではありません。最高の一つを選ぶには困難を極めました。多くの研究のそれぞれが,高く評価できる部分を有しているからです。選考方法に改善の余地があることはもちろんのことですが,会員の皆様の研究水準や能力がますます上がってきていることの証左でしょう。それはそれで学会の発展という観点からすると喜ばしいことです。このような選考過程において,選考委員各位をはじめとした多くの方々のご尽力なしでは,選考を無事終えることができなかったことは言うまでもありません。皆様のご協力に改めて御礼申し上げます。
2019年度学会賞選考委員長 河野武司
2018年度 日本選挙学会賞
2018年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 小川寛貴(高知大学) | 「制度間不均一が有権者に与える影響―政党差別化の分析―」 |
優秀報告 | 山田恭平(立教大学)・尾野嘉邦(東北大学) | 「Size and Local Democracy: How Population Size Shapes the Behavior of Local Politicians in Japan」 |
岸下大樹(東京大学大学院)・笠松怜史(東京大学大学院) | 「Informative Campaigning in Multidimensional Politics: A Role of Naive Voters」 | |
優秀ポスター | 善教将大(関西学院大学)・稗田健志(大阪市立大学) | 「誰がポピュリストの言説を支持するのか:サーベイ実験による検証」 |
大倉沙江(三重大学) | 「日本の障害者と政治参加の格差構造:選挙権、投票手続き、投票への参加」 | Song Jaehyun(早稲田大学) | 「伸縮争点空間と争点投票モデルの統合」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2018年度 学会賞講評
2018年度の学会賞は,優秀論文については,『選挙研究』第 34 巻に掲載された投稿論文5点が対象となりました.5人の選考委員の順位つき投票の結果,小川論文に高評価が集中しました.国政と地方で選挙制度が一致しない制度間不均一が有権者の政党差別化の認知に影響することを調査データを用いて実証分析したものです.
優秀報告については,2018年度研究会(於拓殖大学)で期限内に提出され発表された報告のうち,筆頭著者が会員であるもの32点が選考対象となりました. 山田・尾野報告は,古典的な民主政治のテーマから地方議員行動の違いに関する仮説を引き出し,独自に実施した調査データの実証分析を行ったものであり,オリジナルな分析として評価されました.岸下・笠松報告は,候補者のキャンペーンによって情報が正しく有権者に伝わる条件をシグナリング・ゲームによって検討したものであり,ナイーブな投票者という限定合理的なアクターを想定した独創性な分析をフォーマル・セオリーに慣れ親しんでいない聴衆にもわかりやすく説明した報告として評価されました.
優秀ポスターについては,研究会のポスター・セッションにおける25点が選考対象となりました.善教・稗田報告は,ポピュリズム研究の枠組みを用いて,日本で実施した独自のサーベイ実験データを用いた分析を行ったもので,プレゼンテーションも明瞭に行われており,学術的貢献が認められると評価されました.大倉報告は,日本の政治参加研究者がこれまで等閑視してきた重要テーマを扱っており,障害者の投票率が低いという点を実証的に示したことの社会的意義は大きく,今後の研究発展が期待されると評価されました.Song報告は,投票行動の数理モデルに斬新な理論的工夫を加え,さらに実験を行うことで実証的な裏付けを得ることを試みた野心的研究として評価されました.
学会賞の選考にあたって,委員各位および多くの方々のご協力をいただいたことにお礼申し上げます.
2018年度学会賞選考委員長 川人貞史
2017年度 日本選挙学会賞
2017年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 三輪洋文(学習院大学) | 「Twitterデータによる日本の政治家・言論人・政党・メディアのイデオロギー位置の推定」 |
上條諒貴(京都大学大学院) | 「多数状況における内閣総辞職:政策決定の集権性と党内支持」 | |
優秀報告 | 三輪洋文(学習院大学) | 「混合分布潜在変数モデルによる信念体系の不均質性の析出」 |
優秀ポスター | 清水直樹(高知県立大学) | 「政治的貨幣循環を用いた中央銀行の独立性の測定:日本の選挙と金融政策の分析」 |
岸下大樹(東京大学大学院) | 「Emergence of Populism under Ambiguity」 | 金子智樹(東京大学大学院) | 「日本の各地域における新聞普及率と選挙結果の関係の分析」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2017年度 学会賞講評
今年度の優秀論文賞について『選挙研究』33巻第1号に掲載及び同第2号に掲載予定の会員による査読付き投稿論文5本が選考対象となり、執筆者名を伏して学会賞選考委員会委員に送付して選考した。その結果、三輪洋文論文と上條諒貴論文に多くの票数が集中したため、両論文を優秀論文賞とした。三輪論文は日本の政治家のイデオロギー位置に関する先駆的研究であり、方法論的に新しいスケールを提示するだけでなく、スケール同士を照合して精度を高めている。また、分析マニュアルを明示し、後続研究を誘発する点でも高く評価できる。上條論文は内閣総辞職が生じる要因に関する数理モデルを構築した上で、データを用いて検証したものであり、仮説、理論モデル、データ検証のいずれも比較的完成度が高く、かつ仮説が独創性に富んでいる点でも高く評価できる。
次に、優秀報告賞及び優秀ポスター賞については、2017年度研究会(於、香川大学)で行われた共通論題及び分科会における32報告、ならびにポスターセッションにおける20報告の内、日本選挙学会賞要綱に基づき、学会員により行われた報告及びポスター報告が、各々の選考の対象となった。選考対象については、学会賞選考委員会委員と各セッションの司会者及び討論者(利益相反に該当する場合を除く)による評価に基づいて選考した。
まず、優秀報告賞については、分科会Jの有限混合分布モデルを用いて複数の異なる下位集団を特定することに成功した三輪洋文報告に対する評価が抜きんでており、分析・理論共に高い水準にあり、当該領域のパラダイム変更を迫る可能性がある。さらに、優秀ポスター賞については、政治的貨幣循環モデルを明らかにした清水直樹報告の説得力及び完成度が高い点が評価された。また、ポピュリズムに関する数理モデルを構築した岸下大樹報告の研究の独創性及び発展性が高い評価を受けた。そして、新聞購読と選挙結果に関する「自然実験」を利用した金子智樹報告の研究の新規性と萌芽性が高く評価された。
なお、結果として2017年度の学会賞はいずれも中堅及び若手会員が受賞することになったが、選考に当たっては年齢などを考慮せず、客観的に公平公正な立場から選考した結果であることを付け加えたい。最後に、多忙な中を学会賞選考に携わって頂いた方々に厚く御礼申し上げたい。
2017 年度学会賞選考委員長 小林良彰
2016年度 日本選挙学会賞
2016年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 竹内桂(明治大学) | 「『阿波戦争』に関する一考察:第10回参議院選挙徳島地方区における保守系候補の対立を中心に」 |
松林哲也(大阪大学大学院) | 「投票環境と投票率」 | |
優秀報告 | 渡邉容一郎(日本大学) | 「イギリス型レファレンダムについて:党内政治と保守主義の見地から」 |
秦正樹(北九州市立大学) 横山智哉(立教大学) |
「『政治』の何がタブーなのか?:政治的会話の継続性と断絶性の条件」 | |
優秀ポスター | 三村憲弘(武蔵野大学) 深谷健(武蔵野大学) |
「高校生への政治教育を実験する:大学と行政との連携プロジェクトを通じて」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2016年度 学会賞講評
今年度の学会賞は、優秀論文については『選挙研究』32号に掲載の独立論文2本が、優秀報告については2016年度研究会で発表された40報告(「共通論題」を除く)が、そして、優秀ポスターについては同じく14報告が、それぞれ選考の対象となりました。優秀論文賞については、今年度の査読を通った2投稿論文が、結果的に、いずれも受賞することになりました。竹内論文は、地方紙マイクロフィルムや当事者へインタビューなどを駆使して、「地方政界のダイナミックスを余すことなく描き出している点」が評価されました。また、松林論文は、投票率の低下という重要な問題を扱うものですが、それが統計分析としても手堅いことにとどまらず、投票率改善に向けた「選挙実務上も有益な示唆を与える」ものであることなどが評価されました。優秀報告賞に選ばれました2報告は、その報告内容が優れていたのみならず、「多くの参加者にとってわかりやすかった」ことや、報告者間での連携のスムーズさから「十分な準備が行われていたと想像される」など、プレゼンテーションそのものに秀でた点が特に評価をされました。そして、優秀ポスター賞については、ポスターとして視覚的に優れていた事に加えて、「時宜を得た課題である若年世代への政治教育について、実証的な方法による理論構築、及び解決策の提示を行って」いる点が受賞のポイントでした。今回の受賞論文・報告のみに限ってみても、その研究対象に時間と空間の広がりがあります。また、方法論的にも実に多様です。さらには、理論的であることに加え、社会的なインプリケーションという点においても貴重な業績となっています。じつは、これらの点は、これまでの学会賞の「講評」において繰り返し指摘がされている点かと思いますが、この「研究における多様性」が、本学会ではしっかりと根付いていることを確信することができました。その点を、会員のみなさんと共に喜びたいと思います。
2016年度学会賞選考委員長 西澤由隆
2015年度 日本選挙学会賞
2015年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 堀田敬介(文教大学) | 「合区および総定数変化に対する議席配分最適化」 |
優秀報告 | 秦正樹(神戸大学大学院) | 「非有権者における政治関心の形成メカニズム:政治的社会化の再検討を通じて」 |
優秀ポスター | 勝又裕斗(東京大学) | 「選挙における脆弱性と候補者の政策位置変更」 |
清水唯一朗(慶應義塾大学) | 「選挙区の線引きはどう行われたのか:近世・近代の連続と非連続から考える」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2015年度 学会賞講評
2015年度学会賞については、優秀論文は『選挙研究』31巻2号掲載の独立論文1点が選ばれました。優秀報告は、2015年5月に熊本市で開催された総会・研究会において発表された32報告から2点が、優秀ポスターは同じく14報告から2点が選ばれました。なお、優秀報告については、辞退がありましたので受賞は1点となっています。優秀論文は、現行選挙制度の課題である一票の格差是正について数理的分析を駆使して最適な議席配分法を提起しており、実践的意義の高いことが評価されました。優秀報告は、20歳未満の非有権者の政治的関心の形成要因をサーベイデータ実験により綿密に分析していること、事前によく準備した明晰な発表であったことが評価されました。ポスター報告は、1点は従来明らかでなかった明治期における選挙区形成過程を膨大な資料を使って解明しており、もう一点は政治家の政策位置と選挙との関係を実証的に分析した議員行動研究と評価されました。受賞2点とも図表や資料を工夫し聴衆の関心を引きつける努力がなされていることも評価されました。受賞者にはあらためて祝意を表しますとともに、今後の一層のご活躍を祈念いたします。また、選考に関わっていただいた委員の方々に御礼を申し上げます。
2015年度学会賞選考委員長 森脇俊雅
2014年度 日本選挙学会賞
2014年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
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優秀論文 | 日野愛郎(早稲田大学) 山崎新(早稲田大学) 遠藤晶久(早稲田大学) |
「視線追跡で明らかにする調査回答過程:政党政治支持質問と価値観質問における順序効果」 |
末木孝典 (慶應義塾高等学校) |
「明治期小選挙区制における選挙区割りと選挙人口:明治22年衆議院議員選挙法未成立案をめぐって」 | |
優秀報告 | 湯淺懇道 (情報セキュリティ大学院大学) |
「インターネット選挙運動と公職選挙法」 |
優秀ポスター | 小林哲郎 (国立情報学研究所) 片桐梓 (スタンフォード大学) |
「日中領土問題と首相支持率:サーベイ実験による旗下集結効果の検討」 |
細貝亮(早稲田大学) | 「選挙キャンペーンにおける有権者のインターネット情報接触」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2014年度 学会賞講評
2014年度の学会賞は、優秀論文については『選挙研究』第30巻に掲載された特集「実験政治学」に対する公募論文および独立論文から、それぞれ1点が選ばれました。優秀報告は2014年5月に早稲田大学で開催された総会・研究会で発表された29報告から、優秀ポスターは同じく16報告から1点ずつ選ばれました。優秀論文は実験政治と日本政治史という、新旧の対照的な分野から選ばれましたが、前者は最先端の分野への、後者は新資料に基づく先行研究への、いずれも挑戦という点で共通しています。優秀報告は、2013年参議院議員通常選挙から解禁されたインターネットを用いた選挙運動について、法律の不備等に言及しながら丹念かつ説得的なプレゼンテーションを行った点が評価されました。優秀ポスター2点は。いずれも時事的に関心のあるテーマを扱った研究です。ともに確かなデータ分析を行うとともに、説得的なプレゼンテーションを行っていた点に支持が集まりました。受賞者の方々に改めて祝意を表します。また、各賞の選考に関わっていただいた委員の方々に御礼申し上げます。今年度のような優れた研究が、今後も『選挙研究』、総会・研究会で、発表、報告されることを祈念いたします。
2014年度学会賞選考委員長 池谷知明
2013年度 日本選挙学会賞
2013年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 福元 健太郎(学習院大学) 中川 馨 (元学習院大学法学部学生) |
「得票の継承に対する世襲の効果:政党投票・候補者投票との比較」 |
優秀報告 | 古賀 光生(二松学舎大学) | 「新自由主義から福祉拝外主義へ:西欧右翼ポピュリストの戦略転換」 |
新井 誠(広島大学) | 「参議院議員選挙区選出選挙の『一票の較差』をめぐる最高裁大法廷違憲状態判決について」 | |
優秀ポスター | 横山 智哉 (一橋大学大学院) |
「政治的会話が政治参加に及ぼす効果:政治的関与の媒介効果に注目して」 |
谷口 尚子(東京工業大学) クリス・ウィンクラー (ドイツ日本研究所) |
「国際比較・時系列比較可能な政策コーディング法とその応用」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2013年度 学会賞講評
今回の受賞作は、優秀論文は『選挙研究』29巻に掲載された独立論文の中から、優秀報告については2013年度に京都大学で開催された研究大会で発表された37報告、優秀ポスターは同じく11報告の中から、それぞれ選ばれた。優秀論文は、世襲候補者の有利さが永らく議論の対象でありながら計量的研究が過少である点に注目し、政党投票、候補者投票という比較対象を設けた集計データから検討を進めたことを評価した。優秀報告2点のうち、古賀報告は、分析の主要対象国以上にまで広く適用可能な枠組みを提示するなど、意欲的な労作であった。新井報告は、最高裁大法廷判決の議論の方向を整理し、体系的な批判を加えていた。優秀ポスター2点のうち、横山ポスターは素朴なアイディアを研究に直結させて実証的で有効なデータ分析を行った点で評価される。谷口・ウィンクラーのポスターは、国際比較研究の文脈の中で貴重な日本データの作成であり、プレゼンテーションも明確であった。全体として、学会時の報告、ポスターの内容が多岐にわたる中で、法律と比較政治の分野から学会賞が出たことを喜び、日本選挙学会の学際性と総合性の発展を願ってやまない。そして、学会発表の活発さを喜びつつも、発表を『選挙研究』への投稿と結びつけていかれることをより奨励したい。
2013年度学会賞選考委員長 池田謙一
2012年度 日本選挙学会賞
2012年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 松林 哲也 (ノーステキサス大学) 上田 路子 (シラキューズ大学) |
「市町村議会における女性の参入」 |
優秀報告 | 辻 由希(立命館大学) | 「レジーム再編と女性首長」 |
金 兌希 (慶應義塾大学大学院) |
"Comparing Political Efficacy: An Analysis of CSES Data" | |
優秀ポスター | 前田 幸男(東京大学) | 「政党支持の変動-2007年から2011年まで-」 |
遠藤 晶久 (早稲田大学大学院) |
「動員交差圧力と投票行動」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2012年度 学会賞講評
今回の受賞作は、優秀論文については『選挙研究』28巻に掲載された独立論文の中から、優秀報告については2012年度に筑波大学で開催された研究大会で発表された29報告、優秀ポスターは同じく12報告のなかから、それぞれ選ばれました。優秀論文は、日本政治における女性の進出が芳しくない中にも、市町村合併後の地方選挙での女性政治家の躍進に着眼し、選挙区規模や政党組織の観点から分析を行ったもので、着想の良さが光りました。優秀報告2点は、女性会員によるものであったところで共通する一方、ひとつは戦後女性首長に関する膨大なデータを収集しつつ、その台頭を示唆する典型的な事例について比較分析を行い、もうひとつは政治的有効性と選挙区・政権規模との相関について量的データを用いて精緻に検証したという好対照の内容を含む労作でした。優秀ポスター2点は、政権交代前後の政党支持の変容と、認知・参加・投票に関わる政党・社会集団の動員効果をテーマとして掲げ、それぞれ適切な計量分析法で解析した秀作でした。以上の受賞作品はすべて現代政治に潜む問題、変容、相関を斬新な視点から析出し、学会の発展に大きく寄与するものであるところが高く評価されました。
2012年度学会賞選考委員長 鈴木 基史
2011年度 日本選挙学会賞
2011年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 山崎 新(早稲田大学大学院) 荒井 紀一郎(中央大学) |
「政治的洗練性が規定する態度の安定性」 |
優秀報告 | 庄司 香(学習院大学) | 「『対決』型予備選挙と支持表明のポリティクス--2010年アメリカ中間選挙を題材に」 |
平野 淳一(神戸大学) | 「市長をめぐる選挙過程--候補者属性と選挙結果の分析から」 | |
優秀ポスター | 三船 毅(愛知学泉大学) 中村 隆(統計数理研究所) |
「歴史的経験の重層化による政治不信の蓄積--ベイズ型コウホートモデルによる分析」 |
豊田 紳(早稲田大学大学院) | 「民主化期選挙と政治暴力--メキシコ地方自治体選挙、1990-2000」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2011年度 学会賞講評
今回の受賞作は、優秀論文については『選挙研究』27巻に掲載された独立論文2本の中から、また、優秀報告については2011年度研究会で発表された29報告(「ラウンドテーブル」を除く)、優秀ポスターは同じく12報告のなかから、それぞれ選ばれました。
優秀論文賞は候補作2本の中から選ばれたわけですが、客観的に見ても力作であり、わが国の政治意識研究に大きく寄与する論文です。
優秀報告・優秀ポスターの受賞作も特色ある研究が揃いました。たとえば、アクチュアルな現象に独自の視点から切り込み興味深い説明を提示したもの、骨の折れる膨大なデータ収集にもとづき選挙過程の実態を包括的・体系的に解明したもの、方法論・分析手法の面で今後の選挙研究や関連領域の研究への豊かな応用可能性を示したもの、事例紹介として興味深いだけではなく理論的一般化への明確な志向をもつものなど――。もちろん学会発表ですから、プレゼンテーションの分かりやすさ、印象深さといった点も考慮に含めました。
今回の受賞対象となった論文・報告および惜しくも選外となった諸研究の全体を概観し、今日の選挙研究のテーマの幅広さやアプローチの多様性にあらためて感じ入りました。選挙学会は決してニッチなコミュニティにとどまるものではなく、より一般的な個別科学の発展に対しても大きな影響を及ぼしうることを再認識したしだいです。
受賞者の方々の今後ますますのご活躍を祈念し、あらためて祝意を表します。
2011年度学会賞選考委員長 竹下 俊郎
2010年度 日本選挙学会賞
2010年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 和田 淳一郎(横浜市立大学) | 「ナッシュ積(社会的厚生関数)に基づいた1票の不平等研究」 |
優秀報告 | 大村 華子(京都大学) | 「戦後日本政治における動態的代表-政策は世論によって規定されてきたのか-」 |
濱本 真輔(日本学術振興会) | 「民主党のキャリア・パスと役職配分ルール」 | |
優秀ポスター | 荒井 紀一郎(中央大学) | 「争点の種類と争点投票-対立軸の認知がうみだす投票行動のパターン-」 |
木村 昌孝(茨城大学) | 「フィリピンの選挙行政における情報通信技術(ICT)の導入」 | |
西川 賢 (日本国際問題研究所) |
「1952年の共和党大統領予備選挙におけるアイゼンハワーの中道化に関する分析的叙述:第五次政党制下における共和党の戦略形成」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2010年度 学会賞講評
去年に引き続き学会賞を選考する任に当たった者としまして,今年も,去年よりまたさらに,本学会の研究活動の多様性と質の高さが感じられる候補作が数多く最終選考まで残り,大きな感慨を受けましたことを,まず喜びをもって会員みなさまにご報告いたしたく存じます。論文賞については,今年は対象が5本あり,とりわけ「贅沢な」選考となりました。それぞれアプローチが異なり,委員の間ではさまざまな議論が交わされましたが,最終的には和田会員の論文の独創性がもっとも高く評価されました。報告賞については,去年よりも少ない2点の受賞となりました。どちらも,荒削りな部分がないわけではありませんが,壮大な問題,誰も取り組まなかった問題に果敢に挑戦した,ということが評価され選ばれました。ポスター賞については,複数の委員が推薦したものを中心に,3点が選ばれました。総じて,中堅と若手の伸びやかな研究活動が感じられる報告/論文が多く,学会の将来に明るい展望が開けていると確信できました。来年以降も,本学会が自由で多様性に満ちた研究活動を追求していくこと,そして学会賞がそのためのひとつの励みとなることを,切に願っております。
2010年度学会賞選考委員長 河野 勝
2009年度 日本選挙学会賞
2009年度の受賞者は次の通りです。
学会賞名 | 受賞者名・所属 | 受賞論文・報告タイトル |
---|---|---|
優秀論文 | 今井 亮佑(首都大学東京) | 「選挙動員と投票参加-2007年〈亥年〉の参院選の分析-」 |
優秀報告 | 飯田 健(早稲田大学) | 「投票率の変化をもたらす要因:投票参加の時系列分析」 |
奥 健太郎(東海大学) | 「参議院全国区選挙と利益団体」 | |
砂原 庸介(大阪市立大学) | 「制度改革と地方政治?地方政治再編の説明要因は何か」 | |
優秀ポスター | 稲増 一憲(東京大学大学院) | 「有権者とメディアの関係性から捉える政策争点の違い」 |
高橋 百合子(神戸大学) | 「新興民主主義における政党間競争と分配政治:メキシコの事例分析」 |
(受賞者の所属は刊行・発表当時のもの)
2009年度 学会賞講評
初めての学会賞を選考する任に当たった者としまして、何より会員の皆様にお伝えしたいは、今日、本学会の研究活動がきわめて多岐にわたっており、しかもそこで実にさまざまなアプローチが取り入れられているということに、あらためて気づかされたということです。
いかなる学術の分野であれ、自由な着想、さらには異なる理論や分析手法を相互に受け容れる寛容的態度こそが、知識の進歩を約束するものであることはいうまでもありません。それゆえ、私は、このたび選考の対象となった研究に、選挙そのものを分析するもの、選挙の背景にある制度や選挙の帰結としての現象に着目するもの、ひとつの選挙を詳細に扱うもの、より中・長期的な傾向を探求するもの、明示的に国際比較を試みるもの、新しいデータ分析の手法を開発するもの、といったように、まさに選挙研究の広がりと深みが反映されていたことを、非常にうれしく思いました。
そうした中から選ばれた上記6点の研究は、それぞれ、発想の独自性、構想の大胆さ、分析の緻密さ、プレゼンテーションの明快さ、などの点において特に優れていると評価され、学会賞を受賞するにふさわしいと判断されました(もちろん、HPへのアップロードの締め切りなども遵守されておりました)。今後も、本学会が自由で多様性に満ちた研究活動を追求していくこと、そして学会賞がそのためのひとつの励みとなることを、切に願っております。
2009年度学会賞選考委員長 河野 勝