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理事長ご挨拶

5月18日に開催された2024年度第1回理事会で正式に理事長に選出されました。他にも適任の会員がおられるなかで、私が務めて良いのかという逡巡もありましたが、ご推薦を頂いたことは名誉なことであること、また、このタイミングでなければ、今後お役に立つことも難しいであろうと考え、お引き受けしました。責任の重さを自覚して務めて参りたいと存じます。

さて、私が選挙学会に入会したのは4半世紀前、1999年だと記憶していますが、学問をめぐる環境も大きく変化しました。1990年代後半は、確率標本に基づいた質問紙調査データは、日本でもデータの相互利用が徐々におこなわれるようになっていました。木鐸社が学術データの流通に一定の貢献をしていたところに、東京大学が社会科学データのアーカイブをつくってデータの受け入れと提供を始めた時期になります。当時データはCD-ROMで郵送頒布でした。東京大学のアーカイブがインターネットを通じてデータを提供するようになったのは2009年からです。

その2009年は、選挙学会の機関誌『選挙研究』についても、1つの転機となったようです。『選挙研究』は1986年から刊行されていますが、科学技術振興機構(JST)の事業の支援を受ける形で、過去の選挙研究の電子化が行われ、J-STAGE上で電子版の公開が開始されました。この電子版の公開は現在も継続しており、『選挙研究』が冊子で刊行された後、2年間のエンバーゴー期間を経て、各論文がJ-STAGEで公開されるように運営されています。

このインターネットを通じた研究データの共有そして研究成果の発信という潮流は、オープンサイエンスという旗印の下で、加速度的に進行しています。オープンサイエンスとは何かを明確に定義することは難しいようですが、2つの要因が密接に関連しています。1つは、理念的なものですが、学問の成果も、その根拠データも、原資が税金である研究費によって支えられている以上、社会全体への貢献のために、できるだけ無償で、容易に入手可能な形で提供するべきという考えです。2つ目は、より技術的なものですが、インターネットや関連情報技術の急速な発達で、学術的成果や根拠データを従前よりも格段に容易に流通させることが可能になったことです。学術的営みは理念的には常にオープンであったと思いますが、それが技術的に実装可能になったということでしょう。

この動向は、私たちの研究活動とも無縁ではありません。近い将来には、国の方針として科研費などの公的資金を得て論文を執筆、査読誌に掲載する場合は、論文を即時オープンアクセスにすること、並びに根拠データを適切に取り扱うことが、研究者の責任として求められるようになります。それは、『選挙研究』に掲載される会員の論文や、根拠データの扱い方にも、直接的・間接的な影響を与えます。具体的に国の方針がどのように論文のオープンアクセス化や、根拠データの取り扱い、あるいはJ-STAGEや機関リポジトリ等との関係に影響を与えるかは、これから慎重に詰めていく問題でもあると思いますが、会員の皆さんが、安心して研究活動に従事できるように、方針の整理をしていきたいと考えております。

最後になりますが、選挙学会は、選挙という研究対象を軸に多くの皆さんが会員になっており、その専門分野は多岐にわたります。できるだけ多くの会員の皆さんにとって、これまで以上に有益な学会にするために努力する所存ですので、ご協力とご支援、そして建設的批判を頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

日本選挙学会理事長
前田 幸男
2024年7月2日


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